雑劇用語めも



雑劇のあらすじを追うには必要ないけどなんか気になる雑劇用語。
いつもの個人用めも=例によってあばうと、です。予めご了承くらさい。
曲牌の話は正直たいして分かってないです;;

参考:蒋星煜主編『元曲鑑賞辞典』(上海辞書出版社) ←主にこちらを参照
   周徳清『中原音韻』(芸文印書館)※影印 ←補助的に参照



■雑劇の形式・名称に関すること

●折
雑劇の一幕のこと。雑劇は通常四折構成。ちょいちょい五折構成の劇もある。

●楔子
四折で収まらない場合に付け足す補助幕。曲牌は1~2と少ない。あくまでオマケ。
最初に置いて状況説明したり、折と折の間に置いて場をつないだりする。

●題目・正名
劇の最後にある、劇の内容を端的にまとめた聯(対句)。
一聯、もしくは二聯。
前半を「題目」、後半を「正名」と言う様子。
「正名」が劇名として用いられる(「正名」が聯となっている場合、後半の句が劇名)。

●簡名
劇名の簡称。劇名の前半もしくは後半を使う。

●末本・旦本
主役が男性(=正末)の劇を「末本」、主役が女性(=正旦)の劇を「旦本」という。




■役名に関すること

●正末・正旦
正末=男性の主役 / 正旦=女性の主役
基本、劇を通して主役は変わらないが、折(幕)ごとに変わってもよい。
ただし、主役の性別が変わることは極めて稀。
正末/正旦だけが歌(曲牌)を歌える。

●末・旦 とか
末=男性役。細かい役割により「冲末」「外末」などに分かれるが詳細省略(むずかしい;)。
旦=女性役
浄=権勢家っぽい役
孤=役人
駕=皇帝
…とかいろいろありますがなかなかよう分かりません(コラ)。




■曲牌に関すること

●曲牌
雑劇においては、主役が歌う歌。
旋律があらかじめ決まっており、一定のルールに従って文字を当てる。(高度な替え歌的なイメージ?)
曲牌により句数・字数・平仄・押韻が定められている。
曲牌はそれぞれ特定の「宮調」に属している。
とにかく複雑で素人には手が出せない領域…。。。

●正字
曲牌の既定の字数のこと。
例えば【大徳歌】という曲牌ならば、3,3,5,5,5,7,5 の33字。
平仄や押韻についても細かい規定があるが素人には以下略。

●襯(しん)字
正字以外に句の中に付け足した字のこと。
曲牌は規定が厳しいので、こういう逃げ道がないと難易度が高すぎるのだと思う…。
平仄や押韻に縛られず、早口で付け足す。あくまでオマケ。
曲牌の素人には正字と襯字の区別ができない…。。。
(襯字が小さめの字で表記されている、素人に優しいテキストも時々ある)

●套(とう)数(套曲)
曲牌を組み合わせてワンセットにしたもの。
雑劇では一折につきひとつの套数をつくる。
套数には主に二つのルールがある。
   1.必ず二つ以上の、同一宮調の曲牌を組み合わせること
   2.套(セット)を通して同じ韻を用いること(一韻到底)
つまり、雑劇の一折を構成する曲牌は、同一宮調のものを複数組み合わせて、かつ韻を揃えるのがルール。
曲牌の組み合わせ方にもある程度のお約束があるらしい。




■宮調に関すること

●宮調
要するに音階のこと…らしい(音楽に疎いのでよくわからない;;)
雑劇でよく用いられるのは次の九つの宮調(「九宮」というらしい)。
   【正宮】【中呂宮】【南呂宮】【仙呂宮】【黄鍾宮】
   【大石調】【双調】【商調】【越調】
他に【小石調】【般渉調】なども使われる。
曲牌はこれらのいずれかの宮調に属している。

↓以下は主な宮調について↓

▼仙呂宮
属する曲牌の種類は42(『中原音韻』による、以下同)。
雑劇の第一折に用いられることが多い。
よくある曲牌の組み合わせ方は、
【点絳唇】-【混江龍】-【油葫蘆】-【天下楽】-【那吒令】-【鵲踏枝】-【寄生草】-【賺煞】
また、仙呂宮の【賞花時】【端正好】の曲牌は楔子でよく用いられる。
…曲牌の漢字が難しいのが多いので間違ってるかもしれない;;(以下同)

▼南呂宮
属する曲牌の種類は21。
雑劇の第二折に用いられることが多い。
よくある曲牌の組み合わせ方は、
【一枝花】-【梁州第七】-【隔尾】-【九転貨郎児】-【隔尾】
もしくは、
【一枝花】-【梁州第七】-【牧羊関】-【四玦玉】-【罵玉郎】-【玄鶴鳴】-【烏夜啼】-【煞尾】

▼中呂宮
属する曲牌の種類は32。
よくある曲牌の組み合わせ方は、
【粉蝶児】-【酔春風】-【迎仙客】-【石榴花】-【上小楼】-【幺篇】-【小梁州】-【幺篇】-【朝天子】-【尾声】
【幺篇】=同じ曲牌を続けて使う場合、このように表記する

▼黄鍾宮
属する曲牌の種類は24。
よくある曲牌の組み合わせ方は、
【酔花陰】-【喜遷鶯】-【出隊子】-【刮地風】-【四門子】-【古水仙子】-【尾声】

▼正宮
属する曲牌の種類は25。
よくある曲牌の組み合わせ方は、
【端正好】-【滾繍球】-【叨叨令】-【脱布衫】-【小梁州】-【幺篇】-【快活三】-【朝天子】-【煞尾】
【小梁州】【朝天子】って、中呂にもあるんだけどどういうことなんだろう…?
確かに、別宮調に属する同じ名称の曲牌も稀にあるんだが(名前は同じだが旋律は違う)、
この二つはそれに該当しないっぽいんだよなぁ…。
なお『中原音韻』では、【小梁州】は正宮、【朝天子】は中呂に入ってる。

▼大石調
属する曲牌の種類は21。
よくある曲牌の組み合わせ方は、
【六国朝】-【喜秋風】-【帰塞北】-【六国朝】-【雁過南楼】-【擂鼓体】-【帰塞北】-【好観音】-【好観音煞】

▼双調
属する曲牌の種類は100。多い。
雑劇の最後の一折に用いられることが多い。
よくある曲牌の組み合わせ方は、
【新水令】-【折桂令】-【雁児落】-【得勝令】-【沽美酒】-【太平令】-【鴛鴦煞】

▼商調
属する曲牌の種類は16。
よくある曲牌の組み合わせ方は、
【集賢賓】-【逍遥楽】-【金菊香】-【梧葉児】-【醋葫蘆】-【幺篇】-【後庭花】-【柳葉児】-【浪裏来煞】

▼越調
属する曲牌の種類は35。
よくある曲牌の組み合わせ方は、
【闘鵪鶉】-【紫花児序】-【小桃紅】-【金蕉葉】-【調笑令】-【禿厮児】-【聖薬王】-【麻郎児】-【絡糸娘】-【収尾】




ちなみに水滸戯の宮調一覧(手書き) 「楔」は楔子の位置



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