水滸戯ってどんなもの?



水滸戯とは、宋江ら一党を題材にした雑劇のことです。



まず「雑劇」とは何かというと…

「雑劇」とは、元の頃に盛んに行われた劇です。科白と歌から成る歌劇で、幕数は四幕と決まっており、一幕を「折」と呼びます。四折(四幕)に収まらない場合は「楔子」と呼ばれる一幕を付け足すことが許されています。
「科白と歌から成る」といいましたが、歌を歌えるのは主役のみ。他の人は、節を伴う歌は一切歌いません。雑劇では、男性の主役を「正末」、女性の主役を「正旦」といいます。基本的に、主役は一つの劇を通して一人ですが、幕ごとに替わることもあります。



さて、水滸戯はこのような形式にのっとり、宋江ら一党を扱った劇ということになりますが、ではどんな劇が現存しているかとういうと…

●黒旋風双献功
●同楽院燕青博魚
●梁山泊黒旋風負荊
●大婦小妻還牢末
●争報恩三虎下山
●魯智深喜賞黄花峪
●黒旋風仗義疎財
●豹子和尚自還俗

●梁山五虎大劫牢
●梁山七虎鬧銅台
●王矮虎大鬧東平府
●宋公明排九宮八卦陣

私の知る限りではこれだけです(他にもあるのかな?)。「豹子和尚自還俗」以上のものは小説『水滸伝』成立以前、「梁山五虎大劫牢」以下は小説『水滸伝』成立以後の作品とみなされているらしいです。



大まかな内容は…

だいたい最初に宋江が登場し、自分の経歴と梁山泊の様子を述べます。そして何らかの理由で頭領を下山させます。雑劇では基本的に、宋江ら頭領たちは既に梁山泊に揃っているんです。で、下山した頭領が事件に遭遇し、あるいは事件を起こすんですね。
登場する頭領たちの性格は、小説の『水滸伝』と異なることが多いです。たとえば「同楽院燕青博魚」の燕青は帰山の期限を破って棒打ちにあったり、自分で仕掛けた博打に負けたりと随分間抜けた男になっています。また一方で、小説『水滸伝』に通じる部分も少なからずあります。宋江が色黒で背が低いとか、梁山泊に「替天行道宋公明」と書いた杏黄旗が立っているとかいう描写が、すでに水滸戯に見えます。宋江の経歴も、小説『水滸伝』とほぼ同じです。
水滸戯によく登場するのは李逵。続いて燕青・魯智深でしょうか。小説でも人気がある三人ですが、昔から人気者だったみたいですね。

と、だいたいこんなもんでしょうか(^_^;) 



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