梁山泊黒旋風負荊


★主な登場人物★
☆李逵:正義感の強い男。それゆえはやとちりをしてしまい…
☆宋剛:梁山泊近くに住む男。梁山泊の宋江になりすまし、酒屋の娘・満堂嬌をさらっていく。
☆魯智恩:宋剛とつるんでいる男。こちらは魯智深になりすます。
☆王林:梁山泊近くの杏花庄で居酒屋を開いてい老人。娘の満堂嬌と二人暮し。
☆満堂嬌:王林の娘。18歳で未婚。宋剛・魯智恩にさらわれる。
☆宋江:梁山泊の首領。李逵に誘拐犯扱いされ、李逵と賭けをする。
☆魯智深:宋江と一緒に登場。これまた李逵に疑われる。
☆呉学究:宋江といっしょに出てくる。軽く宋江に助言をする程度。



★第一折★  正末:李逵
 杏花庄で、王林と言う老人が居酒屋を開いていた。一人娘の満堂嬌とふたり暮らしである。梁山泊から程近い場所にあるので、泊の頭領たちがここで酒を飲むことも多かった。
 さてここに、宋剛と魯智恩という二人の男が王林の居酒屋を訪れた。二人はそれぞれ梁山泊の宋江・魯智深になりすまし、王林のねんごろなもてなしを受ける。王林が満堂嬌を呼んで酌をさせると、二人は娘に目をつけ、屁理屈をこねて娘を三日間借りていくと言って満堂嬌をさらっていってしまう。
 途方にくれ嘆く王林の店に、すでに酒の入った李逵がぶらりと入る。李逵は王林に酌をさせるが、王林は終始満堂嬌のことを嘆きっぱなし。李逵はいきさつを話させ、宋江が娘をさらって行ったのならちゃんと送り返させてやると言って山に戻る。

★第二折★  正末:李逵
 李逵が梁山泊に着き、宋江にまみえるや、宋江と魯智深を散々に罵り散らす。「宋江は人の娘を奪い取り、魯智深はそのなかだちをした!」と。
 怒り狂って杏黄旗を斬り倒すのを衆頭領になだめられ、李逵はようやく詳しい事情を話し出す。しかし、宋江自身には全く身に覚えの無いことだった。それでも李逵は宋江への疑いを解かない。そこで宋江と魯智深は、もしそれが自分たちの仕業だったら首を刎ねてもらい、逆にふたりが潔白であったら李逵を斬首することにして、王林の店に行き顔を検分させることにした。

★第三折★  正末:李逵
 宋江・魯智深・李逵が王林の店にやって来、さっそく顔検分を頼む。王林はよく見て、娘をさらっていった二人とこの二人は顔恰好が違う別人だと答える。それ言ったとおりじゃないかと、宋江・魯智深はさっさと梁山泊に帰ってしまう。
 李逵は自分の早とちりを後悔したが間に合わず、ぶらりとどこかへ行ってしまった。
 王林は、結局娘が帰ってこなかったのでまた嘆くが、そこに律儀なことに宋剛・魯智恩が約束どおり娘を引き連れて王林の店にやってきて、満堂嬌を引き渡しに来た。王林は娘が帰ってきてひとまず喜ぶが、このふたりが本物の宋江・魯智深ではないことがさっき分かり、また、これを梁山泊に知らせて李逵に手柄を立てさせれば、賭けに負けた李逵の首がつながるかもしれない。王林は二人を泥酔させたすきに梁山泊に走り、宋江にこのことを報告に向かった。

★第四折★  正末:李逵
 さて、賭けに負けた李逵は、鞭を背負って(存分に鞭打ってくれ、という意味)宋江に罪を乞うことにした。しかし宋江は、首を賭けたのだから首をよこせと言ってきかない。
 どうせなら自刎させてくれ!と、今しも李逵が首を刎ねようとしているところに王林が駆け込み、にせ宋江・魯智深が店で酒を飲んでいると報告する。宋江は、ならばその賊を捕らえたならば罪を帳消しにしてやる、と言って、魯智深に助勢させて李逵を下山させる。
 二人は王林の店に殴りこみ、宋剛・魯智恩をひっとらえ、山寨に引っ張ってきた。こうして李逵は功を立てて罪をのがれ、王林父子にも平穏な日々が戻って一件落着。


*補:
・梁山泊に「替天行道宋公明」と書かれた杏黄旗がある(第一折)。
・李逵のあだ名は山児(第二折)、あるいは黒旋風(第一折)。山児のほうがよく出てくる。
・宋江の容貌が、色黒で背が低い、と書かれている(原文「這箇是黒矮的」、第三折)。
・魯智深の前歴。関西を鎮め、五台山を離れて落草した…とある(原文「誰不知[イ+尓]是鎮関西魯智深、離五台山終落草」、第三折)。
・李逵を指して「鉄牛」という場面がある(第三折)。
・この話は、『水滸伝』第73回に使われている。小説『水滸伝』では、にせ宋江とにせ柴進が劉太公の娘をさらっていく。李逵と燕青が二人の偽者を退治した。

*この劇の宋剛と魯智恩、娘を返しに来るような律儀と言えば律儀な悪人です。殺されちゃうのはいくらなんでもかわいそうだと思ってしまいます。まあ、喜劇的な憎めない悪人といったかんじでしょうか。


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