大婦小妻還牢末


★主な登場人物★
☆李逵:正義感の強い男。李孔目に助けられた恩を返すため奔走する。25歳。
☆李孔目:名は栄祖。東平府の孔目。李逵の弁護をしてやる。30歳。
☆宋江:東平府の劉唐・史進を梁山泊に迎えようとする。
☆劉唐:東平府の五衙都首領(牢番のような小役人)。ひどい人。
☆史進:こちらも東平府の五衙都首領。良心はあるが、劉唐のいいなりになってばかりのちょっと頼りない奴。
☆阮小五:宋江の命を受け、劉唐・史進を仲間に誘いに行く。
☆趙氏:李孔目の第一夫人。僧住・賽嬢の母と思われる。
☆蕭娥:李孔目の第二夫人。趙令史と密通し、邪魔な李孔目を消そうとする。
☆趙令史:東平府の典吏(←?。罪人を扱う仕事である様子)。蕭娥と密通している。
☆僧住・賽嬢:李孔目の子供。非常に健気。



★楔子★  正末:李孔目
 梁山泊の近くの東平府に、五衙都首領(役所の小役人)の劉唐・史進という男がいる。なかなかの人物で、かねてから梁山泊の仲間入りをしたいと思っているという。そこで宋江は山児李逵をつかわし、二人を梁山泊に招くことにした。
 さて、東平府には、李栄祖という孔目(裁判に関わる小役人)がいた。彼は、老人を殴っていた若者を見、腹を立ててその若者を殴り殺してしまった李得という男を役所に引いてきた。李孔目はその男の人品を見てすぐれた人だと思い、裁判で李得のためにとりなしてやる。おかげで李得は死罪を免れることができた。
 実はこの李得こそ山児李逵であった。李逵は李孔目の恩を胸に刻む。
 もうひとつ、東平府で起きた事件があった。それは、五衙都首領(使い走りの小役人)の劉唐が期限に遅れて東平府に帰ってきたこと。李孔目はとりたててかばってやらず、劉唐は棒打ちの罰をくらうことになる。劉唐はこのことを根に持って、李孔目に復讐してやろうと思うようになった。
 さて李孔目が自宅で第一夫人と第二夫人の蕭娥、子供の僧住・賽嬢と一緒に第一夫人の誕生日パーティーを開いていると、李逵が李孔目に礼を言いに来る。李逵は自らの素性を明かし、お礼にと金環を残して立ち去る。李孔目はそれを第二夫人の蕭娥に渡しておいた。

★第一折★  正末:李孔目
 蕭娥にはなんと趙令史という不倫相手がいた。蕭娥は彼に会って、李逵が置いていった金環を見せ、夫が梁山泊の賊と通じていると言う。そこで令史は蕭娥に夫を訴えさせ、李孔目を獄に下してしまう。このときになってようやく、李孔目は蕭娥と趙令史の仲に気づくがもう遅い。失意の李孔目のもとに、隣人が訪れて第一夫人が病気で亡くなったと告げ、さらに二人の子供は蕭娥にひきとられてしまい、李栄祖の憂いは深くなるばかり。

★第二折★  正末:李孔目
 牢屋では、李孔目は彼に恨みをもつ劉唐にいたぶられる。史進は李孔目に同情するが、劉唐の剣幕が恐いので、劉唐の前では孔目をかばってやれない。
 劉唐がご飯を食べに行ったとき、李孔目の二人の子供が父に渡すご飯を持って牢の前にやってきたので、史進は子供を牢に通して李孔目に会わせてやる。
 李孔目がわが子を見ると、服はぼろぼろ、ひどいありさまだった。子供が言うには、蕭娥にいたぶられたとのこと。
 李孔目が悲しんでいると劉唐が戻って来、子供を見て暴力を加え、李孔目を奥の牢屋に連行する。そこに蕭娥が二人の子供を連れ戻しに来る。彼女はそのとき、ひそかに劉唐に金をわたし、李孔目を亡き者にしてほしいと頼む。劉唐は承知した。

★第三折★  正末:李孔目
 劉唐は李孔目を逆さ吊りの刑にする。李孔目はあやうく死にかけるが、彼に会いに来た子供たちに泣きつかれ、なんとか正気を取り戻す。そこに蕭娥も現れて、李孔目が死んだと思い込んで空泣きするが、意外や孔目は生きていた。蕭娥は劉唐を呼びつけてなじったので、李孔目は劉唐によって再び牢にぶち込まれてしまった。

★第四折★  正末:李孔目
 さて、事件のきっかけを作ってしまった李逵は、李孔目が牢屋に入れられたことを知り、宋江に許しをもらい、彼を助けるため下山していた。  一方、劉唐・史進を迎える役目は阮小五がうけたまわり、史進に会って宋江からの手紙を渡す。その光景を見かけた劉唐は、「お前も梁山泊と通じているのか!」と史進をいびるが、阮小五から自分宛の手紙を渡されると、態度が一変、李孔目を救い出して梁山泊に上ろうと言い出す。任務を終えた阮小五は先に梁山泊に帰り、劉唐・史進は李孔目を連れて梁山泊に向かう。その途中、たまたま李逵と会って合流した。一行が道を急いでいると、蕭娥と趙令史が李孔目の子供の僧住・賽嬢を殺そうとしているのに出くわす。逃げ出そうとする二人を取り押さえ、皆で梁山泊に上る。こうして梁山泊に新たな仲間が加わり、さらに淫婦姦夫を成敗して李孔目の恨みを晴らすことができて、一件落着となった。


*補:
・李逵は第13位の頭領。25歳(楔子)。あだ名は山児(楔子)、あるいは黒旋風(第一節)。背が高く、顔は黒く、髯をはやしている(第一節)。
・小説『水滸伝』と共通する言葉も見える。「及時雨」(楔子)、「替天行道」(第四節)、「忠義堂」(第四節)など。
*それにしても、劉唐はひどい男ですね。自分の失態が招いた災いをかばってくれなかったと言って李孔目を逆恨みしたり、ちゃっかり賄賂をもらったり、平気で子供をいじめたり。しかも梁山泊から入山のお誘いがくると、瞬時に態度を翻して孔目を助けて山に上ったり。もしかすると私が読み間違ってるだけなのかもしれませんが…(汗)。


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